水族館・動物園・科学館の学芸員|理系学芸員になるには

水族館の水槽の前で標本と観察ノートを扱う手元の写真に、水族館の学芸員とはという記事タイトルを重ねたアイキャッチ

当サイトは文化庁・文部科学省などの公的機関と、大学・博物館の公式サイトの公開情報をもとに編集部が独自に執筆しています。制度や募集の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。記事内には広告を含む場合があります。

『学芸員って美術館や歴史の博物館の人でしょ?水族館にもいるの?』と気になって調べている方も多いですよね。

結論から言うと、水族館・動物園・科学館も法律の上では博物館の仲間で、学芸員として働く人がいます。ただ、こうした理系の館では、資格そのものより生き物や自然科学の専門の力が重く見られやすいんです。

この記事では、生き物を扱う館と資料を扱う館の違いから、理系の学芸員を目指す時の大学や専攻の選び方まで紹介します。

目次

水族館・動物園・科学館にも学芸員はいる?

先に結論

います。博物館法では、博物館が扱う資料に「自然科学」も含まれています。水族館や動物園、科学館も博物館の仲間として扱われ、学芸員資格を持って働く人がいます。

『学芸員資格と水族館って、どうつながるの?』と不思議に思いますよね。

博物館法第2条は、博物館が扱う資料を「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等」と書いています。生き物や自然、科学技術も、この中の「自然科学」にあたります。

日本博物館協会の「日本の博物館総合調査」でも、動物園や水族館、自然史や理工の館は、博物館の種類の一つとして調べられています。

学芸員資格は館の種類で変わらない

学芸員資格は、美術館でも水族館でも同じ一つの資格です。水族館専用や動物園専用の学芸員資格があるわけではありません。

よくある疑問答え
水族館用の学芸員資格はある?ない。博物館と同じ学芸員資格
科学館の学芸員資格は別?別ではない。同じ学芸員資格
資格は大学のどの学部で取れる?学芸員課程のある大学なら、理系学部で取れる場合もある
資格があれば水族館で働ける?館の採用試験や募集に合格する必要がある

博物館の種類全体については 博物館の学芸員とは で紹介しています。

館の位置づけは館ごとに違う

水族館や動物園、科学館が、博物館法の登録博物館や指定施設になっているかどうかは、館ごとに違います。気になる館があれば、館の公式サイトや設置する自治体の情報で確かめてみてください。

生き物を扱う館と資料を扱う館、仕事はどう違う?

先に結論

学芸員の仕事の柱(集める・守る・調べる・伝える)は、どの館でも同じです。ただ、扱うものが「生きている生き物」か「標本や資料」かで、毎日の仕事の中身が大きく変わります。

ここが、ほかではあまり見かけない比べ方です。

『水族館の学芸員も、標本を並べたり分類したりしているの?』と思った方もいるかもしれません。実は、生き物を扱う館では「守る」の意味が少し変わってくるんです。

生き物を扱う館と資料を扱う館で学芸員の仕事がどう違うかを比べた図解

仕事の違いを比べると

仕事の柱生き物を扱う館(水族館・動物園)資料を扱う館(自然史博物館・科学館など)
集める生き物を迎え入れ、展示できる状態に整える標本や資料を採集・寄贈で受け入れる
守る生き物の健康や飼育環境を保つ標本や資料が傷まないよう保管する
調べる生き物の生態や行動、繁殖を調べる標本や資料を分類し、研究する
伝える解説やガイドで生き物の魅力を伝える展示や実験教室、観察会で伝える

生き物を扱う館では、相手が生きているので、休みの日でも世話が欠かせません。資料を扱う館では、標本を何十年、何百年と残すための保存の工夫が大切になります。

科学館・天文の学芸員はどんな仕事?

科学館では、物理や化学、科学技術の仕組みを、展示や実験で分かりやすく伝える仕事が中心になります。

天文を扱う館では、星や宇宙の話を解説する機会も多くあります。学芸員と天文のつながりに興味がある方は、天文学や地学を学べる大学を探してみるとよいでしょう。

例えば、科学館の実験教室ではこんな声かけが生まれます。

「この風船、どうしてくっついたと思いますか?」
「では、もう一回こすってから近づけてみましょう」

答えを教えるより、見て、考えて、試してもらうのが科学館らしい伝え方なんです。

生き物を扱う館に向く人
  • 生き物の小さな変化に気づける
  • 毎日の世話をこつこつ続けられる
  • 体を動かす仕事が苦にならない
資料を扱う館に向く人
  • 標本や資料を細かく整理するのが好き
  • 長い時間をかけて調べものができる
  • 実験や観察の手順を考えるのが好き

どちらが上ということはありません。自分がどんな毎日を送りたいかを想像して、向いていそうな方を考えてみてください。

分野の違いは 学芸員の分野・種類の違い でも紹介しています。

理系の館では、資格より専門が見られやすい?

先に結論

理系の館では、学芸系の職員に占める学芸員資格を持つ人の割合が、文系の館より低いことが分かっています。資格に加えて、生き物や自然科学の専門の力が大事になります。

『資格さえ取れば、水族館で働けるのかな』と思っている方も多いはずです。ここは、数字で見ておきましょう。

数字で見る文系の館と理系の館

日本博物館協会の「令和6年度 日本の博物館総合調査」速報版を見てみましょう。専任学芸系職員に占める学芸員有資格者の割合が、館の分野で大きく違いました。

館の分野含まれる館の例専任学芸系職員のうち有資格者の割合
文系美術・郷土・歴史68.8%
理系自然史・理工・動物園・水族館・動水植26.6%

「動水植」は、動物園・水族館・植物園をあわせた館のことです。学芸系職員とは、学芸員と、学芸の仕事をする職員をまとめた言い方です。

理系の館では、学芸の仕事をしている人のうち、資格を持つ人は3割に届いていません。つまり、資格を持たずに学芸の仕事をしている人が多いということなんです。

読み取れること

理系の館を目指すなら、資格は「あると強みになるもの」と考えておきましょう。それ以上に、生物学や地質学などの専門を深めることが大事になります。

理系の募集の条件の例

理系の分野の採用でも、学芸員資格を条件にしている例はあります。いくつか見てみましょう。

募集の例学芸員資格の扱いほかの条件
岐阜県 学芸員(自然分野:地学・古生物)採用選考資格を持つこと(取得見込み可)大学卒業(見込み可)など
埼玉県 学芸員採用選考(令和8年度)資格を持つこと(取得見込み可)地質学1名など分野ごとに募集
国立科学博物館 研究員(常勤)持つ人を歓迎(必須ではない)修士以上の学位、または同等以上の研究業績など

この例では、公立の採用選考は資格を条件にし、国立の研究員は学位や研究業績を重く見ています。理系の学芸員を目指すなら、資格と専門の両方をそろえておくと、応募できる募集の幅が広がりますね。

国立の機関の採用の流れは 国立の博物館・美術館の学芸員になるには で紹介しています。

資格が強みになるのはこんな場面

理系の館では有資格者の割合が低いとはいえ、資格が役に立たないわけではありません。

自治体の学芸員採用選考では、学芸員資格を持つことが受験の条件になる例があります。埼玉県の受験案内には「採用時までに資格が取得できない場合は採用されません」とも書かれていました。

公立の館の学芸員として、理系の分野で応募したい方にとっては、資格がスタートラインになるんですね。在学中に取れる環境があるなら、取っておくと選べる道が増えます。

館の種類ごとに求められやすい専攻

館の種類求められやすい専攻の例
水族館海洋生物学・水産学・生物学
動物園動物学・生物学・畜産学など
自然史博物館地質学・古生物学・植物学・昆虫学
科学館物理学・化学・工学
天文を扱う館天文学・地学

これは、扱う生き物や資料から考えた目安です。実際の募集では、分野がもっと細かく指定されることもあるので、気になる館の募集要項を見ておきましょう。

飼育員と学芸員はどう違う?

先に結論

飼育員は、生き物の世話を中心に受け持つ人の呼び方です。学芸員は、博物館法に定められた資格を持ち、資料の収集・保管・展示・調査研究などを受け持つ専門職です。館によっては、同じ人が両方の役割を受け持つこともあります。

『水族館の学芸員と飼育員って、同じ人のこと?』という疑問は、とても多いです。

結論から言うと、職名や仕事の分け方は館ごとに違います。飼育の担当と学芸の担当を分けている館もあれば、一人が両方を受け持つ館もあるんです。

比べる点飼育員学芸員
主な仕事生き物の世話・健康管理・飼育環境づくり収集・保管・展示・調査研究・教育普及
法律での定め博物館法に定めはない博物館法で博物館に置く専門的職員
学芸員資格求めるかどうかは募集ごとに違う学芸員として任用される前提になる
求められる力生き物を毎日世話する力調べてまとめ、伝える力

募集要項の職名で見分ける

実際の募集では、「飼育員」「飼育技師」「学芸員」など、館によって職名がさまざまです。

職名だけで判断せず、業務内容の欄を読んでみてください。「調査研究」「展示の企画」「教育普及」と書かれていれば、学芸の仕事に近いと考えられます。

募集要項で見ておきたいところ
  • 職名(飼育員・学芸員など)
  • 業務内容に調査研究や展示の企画が入っているか
  • 学芸員資格が必須か、歓迎か
  • 求められている専攻や分野
  • 雇用期間と更新の条件

理系の学芸員になるには?大学と専攻の選び方

先に結論

理系の学芸員を目指すなら、生き物や自然科学を学べる学部で、しかも学芸員課程がある大学を選ぶのが近道です。研究職を目指すなら、大学院まで考えておきましょう。

『理系の学部でも、学芸員資格って取れるの?』と心配になる方もいますよね。

学芸員課程は文系の学部のイメージが強いかもしれません。

ただ、課程を置く大学であれば、理系の学部の学生も資格の科目を受けられる場合があります。学部ごとの扱いは、大学の課程の案内で確かめてみてください。

理系の学芸員になるまでの流れ
  1. 生物学・水産学・地学など、学びたい分野がある大学を探す
  2. その大学に学芸員課程があるか、理系学部でも受講できるかを確かめる
  3. 専門の授業と並行して、博物館に関する科目9科目19単位を取る
  4. 博物館実習で、館の仕事を体験する
  5. 研究を深めたいなら大学院に進み、館の採用や公募に応募する

専門学校で学芸員資格は取れる?

水族館や動物園で働きたい人の中には、専門学校を考える方もいるはずです。

ただ、文化庁の学芸員養成課程開講大学一覧に載っているのは大学と短期大学だけで、専門学校の記載はありません。学芸員資格を取りたいなら、大学で単位を取る道を考えておきましょう。

飼育の仕事を中心に考えるのか、学芸員として調査研究まで受け持ちたいのかで、選ぶ学校は変わってきます。

大学院を考えておきたい理由

国立科学博物館の研究員の募集では、修士以上の学位、または同等以上の研究業績などが応募資格でした。

研究を仕事の中心にしたいなら、大学院で研究の経験を積んでおくと、応募できる募集が増えます。進学の考え方は 学芸員に大学院は必要? で紹介しています。

卒業後に資格を取りたくなったら

理系の大学を卒業してから、学芸員資格を取りたくなる方もいますよね。その場合は、通信制大学や科目等履修で資格の単位だけを取る道があります。

例えば八洲学園大学は、授業や課題の提出をすべてeラーニングで行うと案内しています。ただし、博物館実習は別に館で行う必要があります。

すでに専門の知識がある人なら、資格の科目を足すことで応募できる募集が広がります。働きながら取る方法は 社会人が学芸員資格を取る方法 で紹介しています。

大学選びのチェック表

確かめること見るところ
学びたい分野の研究室があるか学部・学科の研究室紹介
学芸員課程があるか文化庁の開講大学一覧、大学の課程案内
理系学部でも課程を受けられるか大学の課程案内・履修案内
博物館実習の進め方大学の課程案内

文化庁の博物館総合サイトによると、博物館に関する科目は国内の約300校の大学で開講されています。その中から、学びたい分野と課程の両方がそろう大学を探してみましょう。

大学の選び方は 学芸員資格が取れる大学 でくわしく紹介しています。

理系の学芸員になる道は、専攻と課程の両方がある大学を見つけるところから始まります。まずは気になる大学の資料を取り寄せて、学べる分野と課程の中身を比べてみてください。

大学選び

学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる

学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。

資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る

(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)

水族館・動物園の学芸員についてよくある相談

知恵袋などでよく見かける、水族館や動物園で働きたい人の相談に答えていきます。

相談1 学芸員の資格があるだけでは、動物園や水族館で働けない?

学芸員資格があれば動物園や水族館で働けるのか、という相談です。

結論から言うと、資格だけで働けるわけではありません。館の採用試験や募集に合格して初めて働けますし、理系の館では有資格者の割合が26.6%という調査結果もあります。

資格は強みの一つになりますが、生き物の専門の知識や経験と組み合わせて考えるのが現実的です。

相談2 行きたい大学では学芸員資格が取れない。それでも大丈夫?

動物の研究ができる大学に行きたいけれど、そこでは学芸員資格が取れない、という相談です。

『資格が取れない大学を選んだら、もう道がなくなる?』と不安になりますよね。そんなことはありません。

理系の館では資格を持たずに学芸の仕事をしている人も多いことが、調査からも分かります。また、大学を卒業した後に、通信制大学や科目等履修で資格の単位を取る道もあります。

学びたい分野を優先して大学を選び、資格は後から取る、という考え方もできるんです。取り方の選択肢は 学芸員になるには で紹介しています。

相談3 水族館の学芸員になるには、何学部に入るべき?

水族館の学芸員を目指していて、どの学部に入ればいいか迷っている、という相談です。

水族館なら、海洋生物学や水産学、生物学を学べる学部が候補になります。農学部や理学部、水産系の学部などで、海の生き物を扱う研究室があるかを見てみてください。

そのうえで、その大学に学芸員課程があるかも確かめておきましょう。専攻と課程の両方がそろっていれば、資格と専門を同時に積み上げられます。

相談4 水族館や博物館の職員は、大学院まで進んだ人が多い?

博物館の学芸員や水族館の職員は大学院まで進んだ人が多いのか、大学卒と大学院卒で違いはあるのか、という相談です。

大学院卒の人の割合を示す公的な数字は、確認できていません。ただ、研究職の募集では修士以上を応募資格にしている例があります。

例えば、国立科学博物館の研究員の募集は、修士以上の学位、または同等以上の研究業績などが条件でした。一方、岐阜県の学芸員採用選考は大学卒業(見込み可)が条件です。

研究を中心にしたいなら大学院、まずは公立の館の採用を目指すなら大学卒業から、というように、目指す働き方で考えてみてください。

相談5 学芸員は何歳からなれる?高校生のうちにできることは?

高校1年生で、将来は水族館で働きたい。学芸員には何歳からなれるのか、という相談です。

学芸員資格は、学士の学位と博物館に関する科目の単位で得るのが基本です。そのため、早くても大学を卒業する時に資格がそろう形になります。

『それまで何もできないの?』と思うかもしれませんが、そんなことはありません。

「好きな生き物について、図鑑より一歩深く調べてみる」
「水族館の解説イベントに参加して、どんな話をしているか聞いてみる」

こうした体験は、大学で何を学ぶかを決める時の大きなヒントになります。

相談から分かる、今のうちにやっておきたいこと
  • 好きな生き物や分野を、本や図鑑で深く調べてみる
  • 水族館や動物園、科学館の解説やイベントに参加してみる
  • 気になる大学の研究室と学芸員課程を調べる
  • 館の公式サイトで、採用情報のページを見ておく
理系の学芸員になるまでの流れをまとめた図解

よくある質問

水族館の学芸員になるには、学芸員資格が必要ですか?

館や募集によって違います。資格を条件にする募集もあれば、歓迎にとどめる募集もあります。理系の館では有資格者の割合が低めなので、専門の力も合わせて身につけておきましょう。

動物園の学芸員と飼育員は同じですか?

館によって違います。飼育の担当と学芸の担当を分けている館もあれば、一人が両方を受け持つ館もあります。募集要項の業務内容で確かめてみてください。

科学館の学芸員資格は、博物館の学芸員資格と違いますか?

同じです。科学館も博物館の仲間なので、必要になるのは同じ学芸員資格です。

理系の学部でも学芸員資格は取れますか?

学芸員課程のある大学なら、理系学部の学生も受講できる場合があります。学部ごとの扱いは大学によって違うので、課程の案内で確かめてみてください。

天文に関わる学芸員になるには、何を学べばいいですか?

天文学や地学を学べる大学が候補になります。天文を扱う科学館などの募集では、専門の分野が指定されることもあるので、気になる館の募集要項を見ておきましょう。

まとめ

この記事の要点
  • 水族館・動物園・科学館も博物館の仲間で、学芸員として働く人がいる
  • 学芸員資格は館の種類で変わらず、同じ一つの資格
  • 理系の館では、専任学芸系職員のうち有資格者は26.6%で、専門の力が重く見られやすい
  • 飼育員と学芸員の分け方は館ごとに違うので、募集要項の業務内容で確かめる
  • 学びたい分野と学芸員課程の両方がそろう大学を選ぶのが近道
学芸員ガイド

学芸員ガイド 編集部

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