学芸員に大学院は必要?修士・院卒が求められる理由

専門書と論文、ルーペや白い手袋が並ぶ研究室の机と、学芸員に大学院が必要かを解説する記事タイトル

当サイトは文化庁・文部科学省などの公的機関と、大学・博物館の公式サイトの公開情報をもとに編集部が独自に執筆しています。制度や募集の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。記事内には広告を含む場合があります。

『学芸員になるには、やっぱり大学院まで行かないとだめなのかな』と悩んでいる方も多いですよね。

結論から言うと、学芸員の資格は大学の学部で取れるので、大学院は資格の条件ではありません。ただ、国立の館などの採用では、修士以上の学位を応募資格にしている募集が多いのも事実です。

この記事では、実際の公募の応募資格を読みながら、学芸員と大学院の関係を見ていきます。

目次

学芸員に大学院は必要?資格と採用で答えが違う

先に結論

学芸員資格に大学院は要りません。学士の学位と、大学で修得する博物館に関する科目の単位で資格が得られます。一方、採用の場面では、目指す館や分野によって修士以上が求められることがあります。

博物館法第5条では、学芸員になる資格の一つを「学士の学位を持ち、大学で博物館に関する科目の単位を修得した者」としています。大学院の修了は、資格の条件には入っていないんです。

『じゃあ、なんで大学院が必要って言われるの?』と思いますよね。それは、採用する側の館が応募資格で学歴を決めているからです。

場面大学院は必要?根拠になるもの
学芸員資格を取る必要ない博物館法第5条(学士の学位+博物館に関する科目)
自治体の学芸員採用試験を受ける募集による自治体の受験案内(大学卒業程度の試験の例もある)
国立の館の研究職に応募する修士以上を求める例が多い各法人の公募要項の応募資格
文化庁の調査官に応募する修士以上を求める例がある文化庁の採用のお知らせ
学芸員資格を取る場面と採用の場面で大学院が必要かどうかを比べた図解

学部卒で学芸員になる道もある

例えば埼玉県の令和8年度学芸員採用選考は、大学卒業程度の試験で、受験資格は学芸員資格を持つ人(取得見込みを含む)などでした。岐阜県の学芸員(地学・古生物)の採用選考も、受験資格は大学卒業(見込み可)と学芸員資格です。

自治体の採用では、学部卒でも受けられる募集があるんですね。学芸員の全体像は学芸員とは?仕事内容・資格・なり方をわかりやすく解説で紹介しています。

大学院学芸員という言い方について

「大学院学芸員」という言葉を見かけることがありますが、そういう名前の資格があるわけではありません。大学院で専門を深めた人が学芸員を目指す、という意味で使われていることが多いです。

資格としての学芸員は1種類です。学部卒でも院卒でも、取れる資格は同じなんです。

公募の応募資格で読む、大学院が求められる募集

ここからは、実際の公募要項の応募資格を見て、どんな募集で大学院が求められているのかを確かめていきます。採用でどう見られるかは、応募資格の書き方にはっきり表れるんです。

ここが大事なところです

国立の館の研究職の募集では、「修士以上の学位」と「同等以上の研究業績」が並んで書かれている例が多くあります。学位そのものより、専門分野をどこまで深めたかが見られていると読めます。

実際の公募の応募資格

募集の例学歴の条件学芸員資格ほかの条件・選考
東京国立博物館 研究職員修士の学位、または同等以上の研究・実務能力応募資格に明記なし学術論文などの研究業績、英語で海外の研究者と交流できる力。書類選考の後、小論文・英文和訳・面接
九州国立博物館 アソシエイトフェロー修士以上の学位、または修士同等以上の研究業績必要博物館での就業経験があることが望ましい。契約は年度単位で最長3年
国立工芸館 特定研究員大学院の修士課程修了以上、または同等以上の知識・経験必要学芸業務の実務経験5年以上。小論文を提出
国立科学博物館 研究員修士以上の学位、または同等以上の研究業績・知識・経験持つ人を歓迎(必須ではない)テニュアトラック期間は原則5年間
文化庁 文化財調査官(工芸品部門・任期付き)大学院修士課程修了以上、または同等以上の知識・経験応募資格に明記なし課題論文と、主な論文または著書2〜3点を提出

いずれも2026年10月11日時点で確認できた、各機関の公募要項やお知らせの内容です。

「同等以上」という書き方の読み方

多くの募集に「または同等以上の研究業績」と書かれていますよね。これは、修士の学位がなくても、論文や研究の実績で同じくらいの力を示せれば応募できる、という意味です。

ただ、実際にそれを示すには、論文や学会発表などの形で研究の成果を見せる必要があります。大学院に進むと、こうした成果を作る機会が自然と増えるんです。

公募要項で見ておきたい応募資格の項目
  • 学位の条件(学士・修士・博士のどれか、「同等以上」の書き方があるか)
  • 学芸員資格が必須か、歓迎か、書かれていないか
  • 専門分野の指定(時代・地域・素材など、どこまで細かいか)
  • 実務経験の年数(博物館での経験を求めているか)
  • 提出物(論文・著書・小論文・研究計画など)

専門分野の指定はかなり細かい

国立の館の募集では、分野が細かく指定されています。例えば東京国立博物館の研究職員の募集は、保存修復・博物館情報・日本彫刻のように分野ごとでした。

細かい分野で募集される以上、その分野を深く学んだ人が選ばれやすくなります。

これが、修士以上が求められる大きな理由なんです。国立の館の採用の仕組みは国立の博物館・美術館の学芸員になるにはで紹介しています。

学芸員が研究職と言われる理由と論文の重み

『学芸員って、研究者なの?』と思う方もいるかもしれません。博物館法第4条では、学芸員は資料の収集・保管・展示と「調査研究」などの専門的事項をつかさどる、と定められています。

先に結論

学芸員の仕事には、法律の上でも調査研究が含まれています。そのため採用では、研究の力を示す論文や研究業績が大切な判断材料になります。

学芸員研究職という見られ方

国立の館では、学芸員にあたる職を「研究職員」「研究員」と呼んでいる例があります。国立科学博物館の研究員の募集では、研究員は大学の助教相当と書かれていました。

学芸員研究職という言葉で調べる方が多いのは、こうした呼び方があるからです。資料を守り展示するだけでなく、調べて新しいことを明らかにする役目もあるんですね。

白い手袋で古い文書を扱う手元と論文のコピー。学芸員の仕事に調査研究が含まれることを表した写真

学芸員の論文が見られる場面

場面論文がどう使われるか確認できた例
書類選考研究業績として審査される東京国立博物館の第1次選考は研究業績・論文・著書などによる書類選考
小論文・論文試験専門の考えを文章で示す国立工芸館は小論文、埼玉県は専門論文試験と一般論文試験
課題論文の提出決められたテーマで書く文化庁の文化財調査官は課題論文と主な論文または著書
資格認定(審査認定)博物館に関する著書・論文などを提出博物館法施行規則第11条

自治体の試験でも、論文試験が行われる例があります。学芸員論文試験の対策は、自分の専門を分かりやすく文章にする練習から始めるのがおすすめです。

大学院で身に付く力と館の仕事のつながり

大学院での学びは、学芸員の仕事のいろいろな場面につながっています。『研究ばかりして、実際の仕事に役立つの?』と心配な方は、次の表を見てみてください。

大学院でやること身に付く力館の仕事のどこで生きるか
先行研究を読み込む分野の知識と情報を集める力資料の調査研究、展示のテーマづくり
資料を調べて記録する資料を正確に見て書き残す力資料の整理・目録づくり
修士論文を書く考えを筋道立てて文章にする力図録や解説文、報告書の執筆
学会で発表する人前で分かりやすく伝える力講座やギャラリートークなどの教育普及

どれも、学部の卒業論文でも経験できることです。大学院では、それをより長い時間をかけて深められるんですね。

院卒だと何が変わる?

院卒で応募すると、修士以上が条件の募集にも手が届くようになります。修士論文という、まとまった研究の成果を示せるのも大きいです。

給与については、国立の館の募集の中に、修士課程修了者や博士課程修了者の初任給の参考を学歴ごとに示している例がありました。学歴によって給与の格付けが決まる仕組みの職場もある、ということです。

補足

学芸員の給与は、公務員なら給与条例や給料表で決まり、法人の職員ならその法人の規程で決まります。具体的な条件は、募集要項の給与の欄で確かめてみてください。

大学院で学芸員資格は取れる?院卒・院生の取り方

『大学院に進んだけど、学部で学芸員資格を取っていなかった』という方もいますよね。学芸員資格を大学院から取りたい場合、いくつかの方法があります。

ここが大事なところです

大学院の授業だけで学芸員資格が取れるわけではありません。博物館に関する科目は大学の課程で修得するものなので、科目等履修や通信制大学、資格認定を組み合わせて考えます。

学芸員資格を大学院からでも取る方法

方法どんな人向けか確認できた例・条件
大学の科目等履修生になる学部を卒業していて、足りない科目を取りたい人早稲田大学には、同大学の大学院修士課程に在籍する人が不足単位を修得する課程がある
通信制大学の科目等履修学士の学位があり、働きながら取りたい人京都芸術大学の通信教育部は、学士の学位を持つ人が1年間で必要な科目を履修できる
資格認定(試験認定)大学院に入学できる人など筆記8科目。合格後に1年間の実務を経て認定
資格認定(審査認定)修士・博士などの学位があり、実務経験が2年以上の人など博物館に関する著書・論文などを書類で審査

大学によって、科目等履修で資格科目を取れるかどうかは違います。科目等履修の仕組みは科目等履修生で学芸員資格を取る方法|大学卒業後でも間に合うで詳しく紹介しています。

大学院学芸員資格と資格認定の関係

学芸員資格認定の受験資格には、学位が関わるものがあります。試験認定は「大学院に入学できる者」が受験資格の一つです。

審査認定は、修士・専門職学位・博士の学位を持ち、博物館資料に関わる実務が2年以上ある人などが対象です。研究を続けてきた人には、こうした道もあるんですね。

よくある勘違い

審査認定は「修士を持っていれば受けられる」わけではありません。博物館資料に関わる実務経験2年以上も条件になっています。受験資格は文化庁の案内で確かめてから準備しましょう。

受験資格の詳しい内容は学芸員資格認定(試験認定・審査認定)とは?受験資格と流れにまとめています。

大学院に進むか迷った時の判断表

ここまで読んで、『結局、自分は大学院に行くべき?』と迷っている方もいるはずです。目指す館と分野で考えると、答えを出しやすくなります。

先に結論

国立の館や研究色の強い館を目指すなら、大学院進学を前向きに考える価値があります。自治体の館を目指すなら、学部卒で受けられる募集もあるので、受験案内を見てから決めても遅くありません。

目指す方向大学院進学の考え方先にやっておきたいこと
国立の博物館・美術館の研究職修士以上が条件の募集が多く、進学を考えたい公募要項を読み、分野と条件を確かめる
県や市の博物館(自治体採用)募集によって学部卒でも受けられる受験案内の受験資格と試験科目を確かめる
専門分野がはっきりしている研究を深めるなら進学が強みになる卒業論文のテーマを早めに決める
まだ分野を決めきれていない進学より先に分野を考える博物館に足を運び、興味のある分野を絞る
社会人で働きながら目指す研究の実績が鍵になる資格を取り、関連する経験を積む
目指す館と分野ごとに大学院進学をどう考えるかを整理した図解

大学院まで出ても任期付きの募集はある

大学院まで出ても、最初は任期付きや非常勤の仕事から始まることもあります。例えば九州国立博物館のアソシエイトフェローの募集は、契約が年度単位で最長3年でした。

『院卒なのに不安定なのはつらい』と感じる方もいますよね。

ただ、任期付きの仕事で積んだ経験や研究は、次の応募で研究業績や実務経験として生きてきます。雇用形態の違いは学芸員の雇用形態|バイト・非常勤・会計年度任用職員と正規の違いで紹介しています。

進学を決める前に確かめたいこと

大学院に進む前のチェック
  • 目指す館の公募要項で、学位の条件を読んでみる
  • 研究したい時代・地域・分野を一文で言えるか考える
  • 指導を受けたい分野の先生がいる大学院か調べる
  • 在学中に博物館で経験を積める機会があるか確かめる
  • 修了後に任期付きの仕事から始まる可能性も考えておく

全部に答えが出ていなくても大丈夫です。分からない項目は、大学院の説明会や研究室の見学で聞いてみてください。

大学選びの段階で考えておくこと

高校生のうちに大学院まで考えるなら、学部の段階から大学院のある大学かどうかも見ておくと安心です。学芸員に強い大学の選び方は学芸員に強い大学の選び方|関東・関西で見るポイントで紹介しています。

学芸員を目指す最初の一歩は、学芸員課程のある大学を探すことです。学べる分野や大学院の有無もあわせて、資料で比べてみてください。

大学選び

学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる

学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。

資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る

(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)

よくある相談:学芸員と大学院についての声

ここでは、ネットの相談サイトに寄せられている学芸員と大学院にまつわる声から、よく見られるものを要約して紹介します。

相談1 史学系の学芸員は、大学院を出ないとなれない?

史学系の学芸員を目指していて、大学院を卒業しないとなれないのか、という相談です。大学院を出ていても難しいのか、という不安もありました。

大学院が必須という法律の決まりはありません。ただ、国立の館の研究職では修士以上を求める募集が多く、文化庁の美術工芸品公開促進調査官(書跡・典籍、古文書担当)の募集では日本中世史を専攻した修士課程修了以上が条件でした。

回答のポイント

史学系では、時代や分野を指定した募集が多くなります。自分が研究したい時代や地域を早めに決めて、卒業論文や修士論文でその分野を深めておくと、応募できる募集を見つけやすくなります。

相談2 学部で学芸員課程を取って卒業するだけでは難しい?

大学で学芸員課程を受けて卒業するだけでは、学芸員になるのは難しいのか、という相談です。

学部卒で受けられる自治体の採用試験もあるので、道がないわけではありません。

一方で、選考では専門試験や論文があり、専門分野の深さが見られます。卒業論文に力を入れて、自分の分野を説明できるようにしておきましょう。

相談3 博物館の学芸員は大学院まで進んだ人が多い?給料は変わる?

博物館や水族館の職員は大学院まで進んだ人が多いのか、学部卒と院卒で給料に違いはあるのか、という相談です。

院卒の学芸員の割合をまとめた公的な数字は、この記事の調査では見つかりませんでした。ただ、国立の館の研究職の募集では修士以上が条件の例が多く、そうした館では院卒が多いと考えられます。

給料については、学歴ごとに初任給の参考を示している募集もあります。

例えば、こんな会話を想像してみてください。

「院に行くと、給料は上がるの?」
「職場の給料表で決まるから、まず募集要項の給与の欄を見てみよう」

実際の金額は、応募する募集要項で確かめるのが確実です。

よくある質問

学芸員になるのに大学院は必要ですか?

学芸員資格を取るのに大学院は必要ありません。学士の学位と博物館に関する科目の単位で資格が得られます。ただ、国立の館の研究職などでは修士以上を応募資格にしている募集が多くあります。

大学院で学芸員資格は取れますか?

大学院の授業だけでは取れません。学部を卒業していれば、大学の科目等履修や通信制大学で博物館に関する科目を修得する方法があります。修士の学位と実務経験2年以上がある人は、資格認定の審査認定も受けられます。

学芸員の採用で論文は見られますか?

見られる募集が多いです。国立の館では研究業績や論文による書類選考があり、自治体の試験でも専門論文や一般論文の試験が行われる例があります。

学芸員は研究職ですか?

博物館法では、学芸員は資料の収集・保管・展示や調査研究などを担う専門的職員とされています。国立の館では研究職員や研究員という名前で募集されることもあります。

博士の学位まで必要ですか?

多くの募集は修士以上が条件ですが、国立科学博物館の特定研究員のように博士の学位を応募資格にしている募集もあります。目指す館の募集要項で確かめてみてください。

まとめ

学芸員の資格に大学院は要りませんが、採用の場面では目指す館によって修士以上が求められます。

迷った時は、目指す館の公募要項を一度読んでみてください。応募資格の書き方から、自分に大学院が必要かどうかが見えてきます。

この記事の要点
  • 学芸員資格は学士の学位と博物館に関する科目の単位で取れる
  • 国立の館の研究職では、修士以上か同等以上の研究業績を求める募集が多い
  • 学芸員の仕事には調査研究が含まれ、選考では論文や研究業績が見られる
  • 大学院から資格を取るなら、科目等履修・通信制大学・資格認定を組み合わせる
  • 進学は、目指す館と分野、公募要項の応募資格を見て決める
学芸員ガイド

学芸員ガイド 編集部

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