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展示を見ていて『この展示を考えた人って、どんな仕事をしているんだろう』と気になったことはありませんか。博物館の学芸員は、まさにその展示の裏側にいる人です。
結論から言うと、学芸員は博物館法で「博物館に置く専門的職員」と決められた職です。ただ、同じ博物館でも種類によって学芸員の人数や働き方はかなり違います。
この記事を読むと、博物館の種類ごとの学芸員の置かれ方と、目指す時に押さえておきたい資格の取り方が分かります。
博物館の学芸員とは?法律で決まっている役目
博物館の学芸員とは、資料を集めて、守って、調べて、展示で伝える専門職です。博物館法第4条で、博物館には専門的職員として学芸員を置くと定められています。
『学芸員って、展示の解説をしている人のこと?』と思う方も多いですよね。
実は、展示の解説は仕事のほんの一部なんです。博物館法第4条では、学芸員の役目をこう書いています。
学芸員は、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。
出典:博物館法 第4条第4項
「つかさどる」は、責任を持って受け持つ、という意味です。資料の扱いの専門家として、展示以外の仕事も広く受け持っています。
博物館学芸員とは何をする人?文化庁の5つの職務
文化庁は、学芸員の主な職務を5つに分けて紹介しています。普段は目に入らない仕事が多いことが分かりますよね。
| 文化庁の職務 | 博物館での具体的な場面の例 |
|---|---|
| 博物館資料の収集・整理 | 寄贈の相談を受けた資料を調べ、受け入れるかを決めて台帳に登録する |
| 保管・保存 | 収蔵庫の温度や湿度を見て、資料が傷まないように管理する |
| 展示・活用 | 展示のテーマを決め、資料を選んで解説パネルを書く |
| 調査研究 | 資料の年代や由来を調べ、論文や報告書にまとめる |
| 教育普及活動等 | 講座やワークショップ、学校向けのプログラムを開く |
展示は、この5つの仕事が積み重なった結果として表に出てくるもの、と考えると分かりやすいです。
仕事の1日の流れは 学芸員の仕事内容と1日の流れ でくわしく紹介しています。
博物館法では、学芸員のほかに学芸員補を置くこともできます。学芸員補は「学芸員の職務を助ける」職です。
博物館にはどんな種類がある?館種と設置者で見る
博物館は「何を扱うか(館種)」と「誰が設置したか(設置者)」で分けると分かりやすくなります。歴史・美術・自然科学など扱う資料が違えば、学芸員に求められる専門も変わります。
『博物館って、歴史の展示をしているところでしょ?』というイメージを持つ方もいるはずです。
博物館法第2条では、博物館が扱う資料を「歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等」と幅広く書いています。美術館や科学館も、法律の上では博物館の仲間なんです。
扱う資料で分けると
| 扱う資料 | 施設の例 | 学芸員の専門の例 |
|---|---|---|
| 歴史・民俗 | 歴史博物館・郷土資料館 | 日本史・考古学・民俗学 |
| 芸術 | 美術館 | 美術史 |
| 自然科学 | 自然史博物館・科学館 | 地質学・生物学など |
| 産業 | 産業や企業の博物館 | その分野の技術や歴史 |
| 生き物 | 動物園・水族館 | 生物学・水産学など |
分野ごとの違いは 学芸員の分野・種類の違い にまとめています。美術館なら 美術館の学芸員、生き物を扱う館なら 水族館・動物園・科学館の学芸員 も参考にしてみてください。
テーマを絞った博物館も多い
ひとつのテーマに絞った専門の博物館も、全国にたくさんあります。
「馬の博物館の学芸員」「鉄道博物館の学芸員」「野球殿堂博物館の学芸員」のように、好きな館の名前と一緒に調べる方もいますよね。
こうした館が登録博物館なのか、学芸員を何人置いているのか、募集をしているのかは、館ごとに違います。気になる館があれば、その館の公式サイトの採用情報やお知らせを見ておきましょう。
設置者で分けると
博物館法では、地方公共団体や地方独立行政法人が設置する館を「公立博物館」、それ以外を「私立博物館」と呼びます。
ほかに、国や独立行政法人が設置する国立の博物館・美術館もあります。国立の館の採用の仕組みは 国立の博物館・美術館の学芸員になるには で紹介しています。
- 扱っている資料の分野(歴史・美術・自然科学など)
- 設置しているのは国・自治体・法人のどこか
- 登録博物館か指定施設か
- 公式サイトに採用情報のページがあるか
登録博物館・指定施設・それ以外で学芸員の置かれ方はどう違う?
同じ「博物館」でも、法律上の扱いは登録博物館・指定施設・それ以外の3つに分かれます。専任の学芸系職員がいる館の割合は、登録博物館がいちばん高く、それ以外の施設では半分を下回ります。
ここが、ほかではあまり語られないポイントです。
『どの博物館にも学芸員がいるんじゃないの?』と思いますよね。実は、館の種類によって事情がかなり違うんです。
3つの違いをかみくだくと
| 区分 | どんな施設か | 学芸員との関係 |
|---|---|---|
| 登録博物館 | 都道府県などの教育委員会の登録を受けた博物館 | 法律上の「博物館」。館長と学芸員を置くことになっている |
| 指定施設 | 博物館に相当する施設として、文部科学大臣や教育委員会が指定した施設 | 博物館に準じる施設として扱われる |
| それ以外 | 登録も指定も受けていない施設(統計では博物館類似施設など) | 学芸員がいる館も、いない館もある |
登録を受けるには、学芸員その他の職員の配置が基準に合っていることや、1年を通じて150日以上開館することなどです。登録の条件は博物館法第13条に書かれています。
指定施設は、以前は「博物館相当施設」と呼ばれていました。令和4年の法改正で、今の名前になっています。

数字で見る学芸員の置かれ方
文部科学省の令和6年度社会教育調査では、博物館は1,346施設で過去最多でした。内訳は登録博物館972、指定施設374です。
博物館類似施設は4,426施設あります。数で言えば、登録も指定も受けていない施設のほうがずっと多いんですね。
| 区分(令和6年度) | 施設数 | 学芸員の数 | うち専任 |
|---|---|---|---|
| 登録博物館 | 972 | 4,028人 | 2,826人 |
| 指定施設 | 374 | 1,590人 | 807人 |
| 博物館類似施設 | 4,426 | 3,824人 | 1,413人 |
出典は文部科学省「社会教育調査」(e-Statの博物館の職員数・博物館類似施設の職員数の表)です。「専任」は、その施設の常勤職員として発令された人を指します。
指定施設では、学芸員1,590人のうち464人が指定管理者の職員です。指定管理者とは、自治体から施設の運営を任された団体のことです。
専任の学芸系職員がいる館の割合
日本博物館協会の「令和6年度 日本の博物館総合調査」速報版でも、同じ傾向が出ています。
| 区分 | 専任の学芸系職員を置いている館の割合 |
|---|---|
| 登録博物館 | 86.4% |
| 指定施設 | 74.8% |
| それ以外 | 43.2% |
| 全体 | 58.5% |
学芸系職員とは、学芸員と、学芸の仕事をする職員をまとめた言い方です。それ以外の施設では、専任を置いている館が半分を下回っています。
働く場所を考える時は、館の名前だけでなく「登録博物館か、指定施設か」も見ておくと、学芸員の体制がイメージしやすくなります。
博物館の学芸員の働き方は?人数と雇用の現実
多くの博物館では、学芸員は数人の小さなチームで働いています。正規の職員だけでなく、任期のある職員や非常勤の職員として働く人もいるのが現実です。
『学芸員って、大勢で分担して働いているのかな』と想像する方もいますよね。実は、少人数の館がかなり多いんです。
典型的な博物館は少人数
日本の博物館総合調査(令和6年度・速報版)では、典型的な館の姿(中央値)は常勤職員3人でした。そのうち学芸員資格を持つ常勤職員は1人です。
1館あたりの平均では、専任の学芸系職員は常勤2.7人・非常勤0.7人でした。専任で常勤の学芸系職員のうち、無期雇用は2.0人、有期雇用は0.6人です。
つまり、学芸員が1人か2人という館も珍しくありません。
小さな博物館の学芸員はなんでも担当
例えば、学芸員が1人の市の資料館を想像してみてください。
資料の受け入れも、展示の準備も、子ども向けの講座も、1人で受け持つことになります。窓口や広報の手伝いをすることもあるでしょう。
「今日は午前に収蔵庫の点検、午後は小学校の見学対応です」
「明日は企画展のパネルの校正と、講座のチラシ作りですね」
こんなふうに、日によって仕事の中身が大きく変わるんです。大変そうに見えますが、資料の受け入れから展示まで全部に関われるのは、小さな館ならではの面白さでもあります。
公立の博物館で採用される流れの例
公立の館の学芸員は、自治体の採用選考で採用されるのが一般的な流れです。
例えば埼玉県の令和8年度学芸員採用選考では、学芸員資格を持つ人か、取得見込みの人が受験できました。試験は第1次が専門試験と論文、第2次が専門試験と面接などの人物試験です。
受験案内には「採用時までに資格が取得できない場合は採用されません」とも書かれています。在学中に受けるなら、卒業までに単位を取り切る計画が欠かせませんね。
採用試験の中身は 学芸員の採用試験の内容と対策 でくわしく紹介しています。
雇用の形は館ごとに違う
公立の博物館では、学芸員が自治体の職員として採用されることが多くあります。一方で、会計年度任用職員として働く人もいます。
会計年度任用職員とは、1会計年度を超えない範囲で置かれる、自治体の非常勤の職のことです。平成29年の法改正で作られた制度です(総務省)。
社会教育調査(令和6年度)でも、博物館の学芸員5,618人のうち672人が非常勤でした。
| 雇用の形 | どんな働き方か | 確かめるところ |
|---|---|---|
| 正規の職員 | 期間の定めなく働く | 募集要項の「雇用期間」 |
| 任期付き・有期の職員 | 契約期間が決まっている | 契約期間と更新の上限 |
| 会計年度任用職員 | 年度ごとに任用される非常勤の職 | 任用期間と勤務日数 |
| 指定管理者の職員 | 運営を任された団体に雇われる | 雇い主がどこか |
雇用の形の違いは 学芸員の雇用形態の違い でくわしく紹介しています。
「学芸員の募集なら正規の職員だろう」と思い込んで応募すると、あとで契約期間に気づくことがあります。応募前に、募集要項の雇用期間と更新の条件を確かめておきましょう。
日本の博物館総合調査では、各館が抱える課題として「職員数が不足」に当てはまるとした館が73.2%ありました。人手が足りない中で、少人数で館を支えているのが今の博物館の姿なんです。
博物館学芸員資格の取り方と、今からできること
博物館学芸員資格は、大学で「博物館に関する科目」9科目19単位を取って学士の学位を得るのが基本の取り方です。ほかに、文部科学大臣が行う資格認定に合格する道もあります。
『資格って、試験を受けて取るものじゃないの?』と思いますよね。学芸員資格は、大学で単位を取って取得する人が多い資格なんです。
博物館に関する科目と単位
博物館法施行規則で、次の9科目19単位が決まっています。
| 科目 | 単位 |
|---|---|
| 生涯学習概論 | 2 |
| 博物館概論 | 2 |
| 博物館経営論 | 2 |
| 博物館資料論 | 2 |
| 博物館資料保存論 | 2 |
| 博物館展示論 | 2 |
| 博物館教育論 | 2 |
| 博物館情報・メディア論 | 2 |
| 博物館実習 | 3 |
博物館実習は、博物館や指定施設などで行う実習と、大学での事前・事後の指導を合わせたものです。
資格を取る3つの道
- 学芸員課程のある大学で、博物館に関する科目の単位を取って卒業する
- 学芸員補の資格を持ち、3年以上学芸員補の職に就く
- 文部科学大臣が行う資格認定(試験認定・審査認定)に合格する
文化庁の博物館総合サイトによると、博物館に関する科目は国内の約300校の大学で開講されています。
通信制の大学や科目等履修で単位を取る道もあります。自分に合うルートは 学芸員資格の取り方 で比べてみてください。
立場ごとに、今からできること
今の立場によって、やっておきたいことは変わります。高校生なら大学選び、大学生なら専門分野と博物館実習、社会人なら資格を取るルート選びが最初の一歩です。
『まだ何もしていないけれど、間に合うのかな』と焦る方もいるかもしれません。
大丈夫です。立場ごとに、やることを一つずつ決めていけば進めます。
| 今の立場 | まずやること | 次にやること |
|---|---|---|
| 高校生 | 学芸員課程のある大学を調べる | 学びたい分野(歴史・美術・生物など)を考える |
| 大学1〜2年生 | 学芸員課程の科目を取り始める | 専門にしたい分野のゼミや研究室を探す |
| 大学3〜4年生 | 博物館実習に参加する | 大学院に進むか、就職するかを考える |
| 社会人 | 通信制大学や科目等履修を比べる | 興味のある館の採用情報を見ておく |
資格と同じくらい大切な専門分野
博物館の学芸員は、資料の調査研究も受け持ちます。そのため、募集では専門の分野が指定されることが多いんです。
例えば、ある県の学芸員採用選考では、歴史(近世史)・歴史(近現代史)・地質学のように分野ごとに募集していました。
資格を取るのと同じくらい、「自分は何の専門家になりたいか」を考えておくことが大事です。
- 好きな博物館の公式サイトで、採用情報のページを探す
- 展示を見る時に、どの分野の資料かを意識する
- 学芸員課程のある大学を1校調べてみる
- 気になる分野の本を1冊読んでみる

博物館の学芸員を目指すなら、最初の一歩は「学芸員課程のある大学を知ること」です。通える範囲や学びたい分野で、候補を絞ってみましょう。
大学選び
学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる
学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。
資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)
博物館の学芸員についてよくある相談
知恵袋などでよく見かける相談から、博物館の学芸員を目指す人の悩みに答えていきます。
相談1 学芸員の資格を取っても求人はほとんど無いって本当?
将来、美術館や博物館で働きたいけれど、資格を取っても求人がほとんど無いと聞いて不安、という相談です。
結論から言うと、学芸員の求人は多くはありません。典型的な館の常勤職員は3人ほどで、空きが出る機会そのものが限られているからです。
ただ、求人がゼロというわけではありません。国立の機関や自治体は公募を出していますし、研究者向けの求人サイト「JREC-IN Portal」で、学芸員の募集が見つかることもあります。
探し方は 学芸員の求人・募集の探し方 にまとめています。
相談2 文系でも、恐竜を扱う博物館で働ける?
文系だけど、恐竜の展示で有名な博物館で働きたい、という相談です。
恐竜の化石を研究する学芸員は、地質学や古生物学など理系の専門を持つ人が中心になります。そうした分野で募集がある場合、専門の分野が条件として書かれることが多いんです。
一方で、博物館には教育普及や広報、事務の仕事もあります。文系の専門を活かせる関わり方がないか、その館の募集を見てみてください。
相談3 博物館の事務職員と学芸員はどう違う?
地元の文学館に就職したいけれど、募集が「事務職員」となっていた、という相談です。
事務職員は、予算や契約、施設の管理など、館を運営する仕事が中心です。学芸員のように資料の調査研究を主に受け持つ職とは役割が違います。
ただ、小さな館では、事務の人が展示の手伝いをすることもあります。募集要項の「業務内容」の欄で、どこまで担当するかを確かめておきましょう。
相談4 大学1年生。博物館学芸員の資格を取るか迷っている
大学で博物館学芸員の資格が取れるけれど、就職が難しいと聞いて取るか迷っている、という相談です。
『取っても使わなかったら、時間のむだになるかも』と迷う気持ちはよく分かります。
結論から言うと、少しでも学芸員に興味があるなら、取れる環境にいるうちに取っておくのも一つの考え方です。卒業してから同じ単位を取ろうとすると、科目等履修などで別に時間をかけることになるからです。
一方で、博物館実習は事前・事後の指導を含めて3単位あり、時間の確保が必要です。ほかの授業やアルバイトとの両立ができるか、履修の計画を立ててから決めてみてください。
- 募集の職名が「学芸員」か「事務職員」か
- 求められている専門分野
- 学芸員資格が必須か、歓迎か
- 雇用期間と更新の上限
よくある質問
博物館の学芸員とは、どんな人ですか?
博物館法第4条で、博物館に置く専門的職員と決められている人です。資料の収集・保管・展示・調査研究などの専門的なことを受け持ちます。
博物館学芸員資格を持っていれば、すぐ博物館で働けますか?
資格を持っているだけでは働けません。文化庁も、学芸員として活躍するには博物館等で任用される必要があると説明しています。博物館の採用試験や公募に合格する必要があります。
美術館や科学館の学芸員も、博物館学芸員と同じ資格ですか?
はい。博物館法の上では、美術館や科学館も博物館の仲間です。必要になるのは同じ学芸員資格です。
登録博物館と指定施設、どちらで働くのがいいですか?
どちらがよいとは一概に言えません。ただ、専任の学芸系職員を置いている館の割合は登録博物館のほうが高い傾向があります。気になる館の体制は、採用情報や館の資料で確かめてみてください。
まとめ
- 博物館の学芸員とは、資料の収集・保管・展示・調査研究を受け持つ専門職
- 美術館や科学館、動物園・水族館なども博物館の仲間
- 登録博物館・指定施設・それ以外で、学芸員の体制は大きく違う
- 典型的な博物館は少人数で、雇用の形もさまざま
- 博物館学芸員資格は、大学で9科目19単位を取るのが基本の取り方





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