学芸員の分野・種類|歴史・考古・美術・自然科学の違い

土器や化石、絵、標本箱が並ぶ机に「学芸員の分野と種類」の文字

当サイトは文化庁・文部科学省などの公的機関と、大学・博物館の公式サイトの公開情報をもとに編集部が独自に執筆しています。制度や募集の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。記事内には広告を含む場合があります。

「歴史の学芸員と美術館の学芸員って、別の資格なの?」と気になっている方も多いですよね。

結論から言うと、学芸員の種類は資格では分かれていません。資格は1つで、働く館と専門分野によって仕事の中身が変わるんです。

この記事では、学芸員の分野ごとの違いと、自分の分野をどう決めればいいかをお話ししますね。

目次

学芸員に種類はある?資格は1つ、分野はいろいろ

先に結論

学芸員の資格に、歴史用・美術用・自然科学用といった種類はありません。博物館法の資格は1つで、どの分野の館でも同じ資格です。違いが出るのは「どの資料を専門に扱うか」という専門分野のほうです。

『美術館の学芸員になりたいなら、美術の学芸員資格が要るのかな』と思いますよね。

実は、博物館法が定める資格は「学芸員」と、その仕事を助ける「学芸員補」の2つだけです。美術館も歴史博物館も科学館も、同じ学芸員資格で働きます。

大学で学ぶ「博物館に関する科目」も、分野に関係なく共通の9科目19単位です。展示の作り方や資料の保存の考え方など、どの館でも使う基礎を学びます。

博物館法の「博物館」はとても広い

博物館法第2条は、博物館が扱う資料として「歴史・芸術・民俗・産業・自然科学等」を挙げています。

つまり、法律の上では美術館も科学館も動物園も水族館も、すべて博物館の仲間なんです。だから資格も1つで足りる、というわけですね。

分けて考えるもの分かれているか中身
資格分かれていない学芸員(と学芸員補)の1つ
大学で学ぶ博物館に関する科目分かれていない全分野共通の9科目19単位
働く館の種類分かれている歴史博物館・美術館・科学館・水族館など
専門分野分かれている歴史・考古・美術・民俗・自然科学など

この表のように、「資格」と「分野」を分けて考えるとすっきりします。

仕事の基本は、どの分野でも同じ

文化庁は、学芸員の主な仕事を5つ挙げています。資料の収集・整理、保管・保存、展示・活用、調査研究、教育普及活動です。

この5つは、歴史系でも自然科学系でも変わりません。違うのは、集める資料が古文書なのか、絵画なのか、化石なのか、という点です。

例えば同じ「展示」でも、こんな違いが出ます。

  • 歴史系なら、古文書や古い道具を時代順に並べて、当時の暮らしを伝える
  • 美術系なら、作品の照明や見せる順番を工夫して、作品そのものを味わってもらう
  • 自然科学系なら、標本や化石を分類ごとに並べて、生き物や地球の仕組みを伝える

学芸員の仕事全体の流れは学芸員の仕事内容でくわしく紹介しています。

学芸員の分野を一覧で見ると?扱う資料・近い専攻・働く館

先に結論

学芸員の専門分野は、大きく歴史系・考古学・美術・民俗・自然科学・理工や産業・生き物の館に分けて考えると分かりやすいです。分野ごとに、扱う資料と、大学で学んでおくと近い専攻が変わります。

『自分が好きなものは、どの分野になるんだろう』と考えている方もいますよね。

ここでは、この記事独自の分け方で、分野ごとの特徴を一覧にしてみました。館の名前は一般的な呼び方にしています。

分野主に扱う資料大学で近い専攻働くことが多い館
歴史(文献史)古文書・記録・地図・古い写真日本史・東洋史・西洋史歴史博物館・郷土資料館・文書館
考古学土器・石器・発掘された遺物考古学歴史博物館・埋蔵文化財の施設
美術絵画・彫刻・工芸・書美術史・芸術学美術館・歴史博物館の美術部門
民俗祭りの道具・農具・暮らしの道具民俗学・文化人類学郷土資料館・民俗資料館
自然科学化石・岩石・昆虫や植物の標本生物学・地質学自然史博物館・科学館
理工・産業機械・技術の資料・産業の記録工学・科学技術史科学館・産業や企業の博物館
生き物の館生きている動植物生物学・農学・水産学動物園・水族館・植物園
学芸員の専門分野ごとに扱う資料と近い専攻を並べた図解

歴史系の学芸員は「文献」と「もの」の両方を見る

歴史系の学芸員は、古文書を読んで当時のことを調べるのが中心です。くずし字を読む力や、資料の年代を見分ける力が求められます。

一方で、郷土資料館のような小さめの館では、歴史・考古・民俗をまとめて一人で担当することもあります。

『歴史系って、日本史を勉強していればいいの?』と思った方もいるかもしれませんね。

日本史の知識はもちろん土台になります。ただ、館で扱うのは教科書ではなく「本物の資料」です。資料を読み解いて、展示や解説に変える力が大事になります。

考古学の学芸員は発掘の現場ともつながる

考古学の学芸員は、土器や石器など、地面の下から出てきた資料を扱います。

考古学を専門にする人は、博物館だけでなく、自治体の教育委員会で埋蔵文化財の調査や文化財保護の仕事に就くこともあります。学芸員と文化財の仕事が近い分野なんです。

美術の学芸員は作品と展覧会が中心

美術館の学芸員は、作品の調査と展覧会づくりが仕事の中心です。作品を借りるための調整や、図録の執筆も大事な仕事になります。

美術館の働き方は美術館の学芸員とは?で紹介しています。

民俗の学芸員は地域の暮らしを記録する

民俗の学芸員は、祭りの道具や農具、昔の台所の道具など、ふつうの人の暮らしに使われてきた資料を扱います。

地域の人に話を聞いたり、行事の様子を記録したりと、館の外に出る仕事が多いのも特徴です。「この道具、昔はどう使っていたんですか?」と聞き取りをするのも大事な調査なんです。

自然科学系・生き物の館は理系の学芸員

化石や標本を扱う自然史系や、動物園・水族館・植物園では、理系の学芸員が活躍しています。

生き物の館では、資料が「生きている」のが大きな違いです。飼育や栽培と、調査研究や教育活動をつなげるのが学芸員の役目になります。

くわしくは水族館・動物園・科学館の学芸員をどうぞ。

音楽など、小さな分野の学芸員もいる

学芸員の分野は、ここに挙げたものだけではありません。楽器や楽譜など音楽に関わる資料を扱う館や、文学館、写真や映像の館などもあります。

こうした館では、その分野を専門に学んだ人が学芸員として働きます。学芸員と音楽のように、好きな分野と博物館の仕事を結び付けられる道もあるんです。

分け方について

この一覧は、記事で分かりやすく説明するための分け方です。館によっては「人文」「自然」の2つに分けたり、もっと細かい分野で担当を決めたりしています。

学芸員の専門分野は採用でどう見られる?

先に結論

学芸員の採用は、「歴史(近世史)」「地質学」のように専門分野を指定して行われることがよくあります。どの分野を専門にしてきたかが、そのまま応募できる募集を左右するんです。

『資格が1つなら、どの館にも応募できるんじゃないの?』と思いますよね。

資格の上ではそうです。ただ、実際の募集は「この分野の人を採りたい」という形で出ることが多いんです。

実際の募集は分野ごとに出ている

公的機関の募集を見ると、分野の指定がよく分かります。

募集した機関募集の分野(例)
埼玉県教育委員会(令和8年度の学芸員採用選考)歴史(近世史)、歴史(近現代史)、地質学
岐阜県(学芸員の採用選考)自然分野(地学・古生物)
東京国立博物館(研究職員)保存修復、博物館情報、日本彫刻
九州国立博物館(アソシエイトフェロー)染織、金工・武器武具
東京文化財研究所(研究職)民俗芸能・祭礼行事、デジタル人文学、仏教美術史

出典は各機関の募集案内です(2026年10月時点の掲載)。同じ「学芸員」でも、求められる専門はこれだけ違います。

例えば、歴史の募集で求められるのは古文書を読む力です。地質学の募集なら、岩石や地層を調べる力が問われます。

専攻の深さが問われる募集もある

国立の博物館では、修士の学位(またはそれと同等の研究実績)を応募資格にしている募集があります。専門分野の論文や研究業績で書類選考が行われることもあります。

一方、県の学芸員採用選考は「大学卒業程度」とされ、学芸員資格(または取得見込み)を受験資格にしています。

よくある思い込み

「資格さえ取れば、好きな館を選べる」と考えるのは少し危険です。募集の分野と自分の専攻が合わないと、そもそも応募できないことがあります。

分野によって資格を持つ人の割合も違う

日本博物館協会の「令和6年度 日本の博物館総合調査」の速報版によると、専任の学芸系職員のうち学芸員の資格を持つ人は63.9%でした。

館の種類別では、美術・郷土・歴史の文系の館で68.8%、自然史・理工・動物園・水族館などの理系の館で26.6%と、差があります。

理系の館では、資格よりも専門分野の知識や研究実績で採用される人も多い、ということがうかがえますね。

小さな館では一人で何分野も受け持つ

同じ調査の速報版では、館の典型的な姿(中央値)として、学芸員資格を持つ常勤職員は1人とされています。

学芸員が1人か2人の館では、歴史も民俗も自然も、一人で受け持つことになります。『専門は一つに絞るべき?』と迷うかもしれませんが、軸になる専門を持ちつつ、周りの分野にも目を向けておくと安心です。

館の規模学芸員の担当のしかた
学芸員が多い大きな館分野ごとに担当が分かれ、専門を深く掘り下げる
学芸員が少ない小さな館一人で複数の分野を受け持ち、幅広く対応する

大学院が必要になる場面は学芸員に大学院は必要?で紹介しています。

歴史系の学芸員を目指すなら?考古学・文化財の道も

先に結論

歴史系の学芸員を目指すなら、日本史などの専攻で資料を読む力をつけ、学芸員課程で資格を取るのが基本の道です。考古学や文化財の仕事まで視野に入れると、働ける場所が広がります。

学芸員の分野の中でも、歴史系は目指す人が多い分野ですよね。

ここでは、学芸員の歴史系・考古学・文化財の道を、学生のうちにやっておきたいことと合わせて見ていきます。

歴史系の学芸員が働く場所

歴史系の学芸員が働く場所は、博物館だけではありません。

  • 県立や市立の歴史博物館、郷土資料館
  • 古い記録を保存する文書館
  • 自治体の教育委員会(文化財保護の仕事)
  • 大学の附属博物館

例えば埼玉県の学芸員採用選考では、博物館・文書館などで学芸の仕事をするほか、教育委員会の事務局で文化財保護の仕事を担当する場合があるとされています。

学生のうちにやっておきたいこと

歴史系の学芸員を目指す人の準備
  1. 日本史・考古学・美術史など、専門にする時代や分野を決める
  2. 学芸員課程で博物館に関する科目を履修する
  3. 古文書や遺物など、本物の資料に触れるゼミや調査に参加する
  4. 卒業論文で、資料を自分で読み解いた研究をまとめる
  5. 大学院に進むか、自治体の採用試験を受けるかを考える

『どの時代を選べばいいか、まだ分からない』という方もいますよね。

最初から決めきらなくて大丈夫です。ゼミや博物館実習で資料に触れるうちに、自然と興味が絞られていくことも多いんです。

「学芸員歴史学」と「研究者」の違い

歴史学の研究者と学芸員は、どちらも資料を調べます。違いは、研究の成果を展示や教育で多くの人に伝えるところまでが仕事になる点です。

「研究が好きだけど、人に伝えるのも好き」という方には、学芸員の仕事が合っているかもしれませんね。

例えば展示室では、こんなやりとりが生まれます。

「この古文書、何が書いてあるんですか?」

「村の人たちが、水の使い方を話し合って決めた約束なんですよ」

資料の中身を、来た人の言葉に置きかえて伝える。歴史系の学芸員ならではの面白さです。

自分の専門分野はどう決める?チェックリストで考える

先に結論

専門分野は「好きなもの」だけでなく、「その分野を深く学べる大学か」「その分野の館がどこにあるか」まで考えて決めると、後で迷いにくくなります。

『好きなことが多すぎて、ひとつに決められない』と悩む方もいますよね。

そんな時は、次のチェックリストで考えてみてください。

専門分野を決める前のチェック
  • 何時間でも調べていられる資料は何かを書き出す
  • その分野を専攻できる学部・学科がある大学を探す
  • 志望する大学に学芸員課程があるかを確かめる
  • その分野の館が、住みたい地域にどれくらいあるかを調べる
  • 修士まで学ぶ必要がありそうな分野かを確かめる

文系か理系かで、大学の選び方が変わる

歴史・美術・民俗を専門にしたいなら、文学部や人文系の学部が中心になります。自然科学なら理学部、生き物の館なら生物系や農学・水産系の学部が近いですね。

ここで大事なのは、専攻と学芸員課程の両方がそろっている大学を選ぶことです。学部によって学芸員課程を履修できるかが違うこともあるので、早めに確かめておきましょう。

自分の学芸員の専門分野を決める流れの図解

大学選びは「分野」と「課程」をセットで

文化庁の博物館総合サイトでは、博物館に関する科目は「国内の約300校の大学」で開講されていると紹介されています。

数が多いぶん、専攻したい分野と学芸員課程の両方がある大学を探すのがコツです。分野ごとの大学の選び方は学芸員資格が取れる大学や学芸員に強い大学の選び方で紹介しています。

専門にしたい分野が見えてきたら、次は学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみましょう。専攻の内容と課程の両方を、資料で並べて確かめるのが近道です。

大学選び

学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる

学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。

資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る

(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)

学芸員の種類・分野についての知恵袋によくある相談

先に結論

知恵袋では「博物館と美術館の学芸員は同じ資格?」「歴史系は正規雇用が少ないって本当?」「自然系の学芸員になるには?」という相談がよく読まれています。

ここでは、学芸員の種類について読まれている相談を要約して答えていきます。

「博物館の学芸員と美術館の学芸員は同じ資格なの?」

学芸員に種類があるのか、館ごとに資格が違うのかを知りたい、という相談です。とても多く読まれています。

答えは「同じ資格」です。博物館法の上では、美術館も歴史博物館も「博物館」に含まれます。

違うのは、専門分野と、採用の時に求められる知識です。美術館なら美術史、歴史博物館なら日本史などの専門が問われることが多いですね。

「歴史系の学芸員は正規雇用がほとんどなく、給料も少ないって本当?」

歴史系の学芸員や博物館の職員を目指したいけれど、現実が不安、という相談です。

文部科学省の社会教育調査(令和6年度)では、博物館の学芸員5,618人のうち、専任が3,633人、非常勤が672人、指定管理者の職員が865人でした。専任の人が多いものの、非常勤や任期付きの働き方もあるのは事実です。

給料は、公立の館なら自治体の給与の決まりで、募集ごとに要項に書かれています。気になる募集の要項を実際に読んでみると、イメージがつかみやすいですよ。

雇用の形の違いは学芸員の雇用形態でくわしく紹介しています。

「自然系の学芸員という仕事を知って興味が湧きました。どうすればなれますか?」

最近、自然系の学芸員という職業を知った、という相談です。

自然系の学芸員を目指すなら、生物学や地質学など理系の専攻で学び、学芸員課程で資格を取るのが基本です。岐阜県の「自然分野(地学・古生物)」のように、分野を指定した採用もあります。

理系では、修士以上の研究実績を求める募集もあります。大学院に進むかどうかも、早めに考えておくと安心です。

相談に共通する確認ポイント
  • 資格は1つで、館の種類で分かれていないことを知っておく
  • 志望する分野の募集が、どんな専攻を求めているかを見る
  • 正規か非常勤かなど、募集要項で働き方を確かめる

よくある質問

学芸員の種類によって、資格の取り方は違いますか?

違いません。どの分野の学芸員でも、大学で博物館に関する科目(9科目19単位)を取るなど、取り方は共通です。違うのは、大学で何を専攻するかです。

学芸員の分野は、大学に入ってから決めても間に合いますか?

間に合います。ゼミや博物館実習で資料に触れてから絞る人も多いです。ただ、理系の分野は学部選びが大きく関わるので、文系か理系かは早めに考えておきましょう。

若狭歴史博物館の学芸員のように、特定の館で働きたい時はどうすればいいですか?

公立の館は、設置している県や市の採用として募集が出ることがあります。その館のサイトと、設置者の自治体の採用情報の両方を定期的に見ておきましょう。

学芸員の専門分野は、途中で変えられますか?

学び直して変えることはできます。ただ、採用では専門分野の研究実績が見られることが多いので、変える場合は新しい分野でも調査や研究を積み重ねることが大事です。

まとめ

この記事の要点
  • 学芸員の資格は1つで、歴史用・美術用のような種類はない
  • 分野は歴史・考古学・美術・民俗・自然科学・理工・生き物の館などに分かれる
  • 採用は専門分野を指定して行われることが多い
  • 歴史系は文化財保護や文書館の仕事にもつながる
  • 専攻したい分野と学芸員課程の両方がある大学を選ぶ
学芸員ガイド

学芸員ガイド 編集部

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