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博物館や美術館で展示を見ているうちに『こういう仕事がしてみたい』と思った方も多いはずです。でも、学芸員になるには何から始めればいいのか、意外と分かりにくいですよね。
結論から言うと、学芸員になるには「資格を取る」と「博物館に採用される」の2段階があります。資格は大学で科目を取れば手が届きますが、採用は館ごとの募集を待って受ける形です。
この記事では、高校生から就職までの時期ごとに、やっておくと後で困らないことをまとめました。
学芸員になるには「資格」と「採用」の2段階
学芸員になるには、まず博物館法に定められた学芸員の資格を取り、そのうえで博物館や美術館の採用試験・公募に合格して「学芸員として働く」という順番です。資格を取っただけでは学芸員にはなれない、という点を最初に押さえておきましょう。
学芸員は、博物館法で「博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる」と定められた専門の職員です(博物館法第4条)。
文化庁も「学芸員や学芸員補として活躍するには,博物館等で任用される必要があります」と案内しています。任用とは、館に採用されてその職に就くことです。
| 段階 | やること | どこで決まるか |
|---|---|---|
| 1. 資格を取る | 大学で博物館に関する科目を取る、または文化庁の資格認定に合格する | 博物館法・博物館法施行規則 |
| 2. 採用される | 博物館・美術館・自治体などの募集に応募して選考を受ける | それぞれの館や自治体 |
| 3. 学芸員として働く | 資料の収集・保管・展示・調査研究・教育普及などを担当する | 配属された館 |
『資格さえあれば、どこかの博物館で働けるのでは』と考える方もいますよね。実は、ここが学芸員のなり方でいちばん誤解されやすいところなんです。
資格は「応募するための条件」で、採用は館ごとの募集に左右されます。だからこそ、資格を取る時期から採用までを一続きで考えておくと動きやすくなります。

博物館学芸員になるには、どんな館を目指すかも大事
博物館の学芸員になるには、と一口に言っても、働く場所はいろいろです。歴史や考古の博物館、美術館、科学館、水族館や動物園も、博物館法の上では博物館の仲間に入ります。
令和6年度の文部科学省「社会教育調査」では、博物館(登録博物館と指定施設)は1,346施設、そこで働く学芸員は5,618人でした。館の種類によって、求められる専門分野も変わります。
分野の違いは学芸員の分野・種類で詳しく紹介しています。
学芸員に必要な資格と取り方
学芸員に必要な資格は、博物館法第5条に定められています。どうやってなるのか迷ったら、まずは次の3つのどれに当てはまるかを見てみてください。
| ルート | 条件 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 大学で単位を取る | 学士の学位があり、大学で博物館に関する科目の単位を取る | 高校生・大学生、大学を卒業した社会人 |
| 学芸員補として経験を積む | 学芸員補になれる条件を満たし、3年以上学芸員補の職にある | すでに博物館などで働いている人 |
| 文化庁の資格認定 | 試験認定または審査認定に合格する | 大学卒業後に、別の方法で資格を目指す人 |
いちばん多くの人が通るのは、大学で単位を取るルートです。博物館に関する科目は、生涯学習概論・博物館概論・博物館実習など9科目19単位と決まっています(博物館法施行規則第1条)。
- 学士の学位(4年制大学の卒業)
- 博物館に関する科目8科目16単位
- 博物館実習3単位(学内実習と館園実習、事前・事後の指導を含む)
- 卒業証明書と、博物館に関する科目の単位修得証明書
ちなみに、大学で単位を取りきっても、文部科学省から資格の証明書が届くわけではありません。採用の時には、卒業証明書と単位修得証明書を出して資格を証明します(文化庁の案内より)。
文化庁の資格認定は、少なくとも2年に1回の実施です。令和8年度は試験認定、令和9年度は審査認定というように、年度ごとに交互に行う運用になっています。
学芸員補から学芸員を目指す道もある
学芸員補は、学芸員の職務を助ける職員です(博物館法第4条)。短期大学士の学位があり博物館に関する科目の単位を取った人などがなれます。
学芸員補の職に3年以上あれば、学芸員の資格の条件を満たす道が開けます。短大から目指す方や、すでに館で働いている方は学芸員補とは?も読んでみてください。
3つのルートの選び方は学芸員資格の取り方|3つのルートと自分に合う選び方で、もう少し詳しく比べています。
学芸員の資格は、一般に国家資格と呼ばれることもあります。ただ、文化庁などの公的なページでは「博物館法に定められた資格」「博物館等で任用される」という説明になっています。また、法令に資格の更新や有効期限の定めはありません。
高校から就職まで、時期ごとにやっておくこと
『学芸員になりたいけど、今の自分は何をすればいいの?』という方も多いですよね。ここでは時期ごとに、やっておくと後で効いてくることを並べてみます。
| 時期 | やっておきたいこと | 迷った時の目安 |
|---|---|---|
| 高校生 | 興味のある分野を絞る、課程のある大学を調べる、博物館の講座や体験に参加する | 歴史・美術・自然科学のどれに一番わくわくするか |
| 大学1〜2年 | 学芸員課程に登録する、専門分野の授業を深める、博物館に通う | 卒業論文で何を調べたいか |
| 大学3年 | 博物館に関する科目を進める、ボランティアやインターンに参加する | 大学院に進むか就職するか |
| 大学4年 | 博物館実習、卒業論文、採用試験・公募への応募 | 資格取得見込みで受けられる募集を探す |
| 卒業後 | 大学院、非常勤や任期付きの職、別の仕事をしながら公募を待つ | 研究を続けられる環境があるか |

高校生のうちにできること
高校生のうちは、資格よりも「何を専門にしたいか」を探す時期です。学芸員は館ごとに専門分野を持って働くので、ここが大学選びの軸になります。
夏休みなどに、博物館が子どもや中高生向けの講座を開いていることがあります。「ジュニア学芸員」のような名前で、展示の裏側を学芸員体験として見せてくれる企画を見かけることもあります。
内容や対象年齢は館ごとに違うので、気になる館のお知らせ欄をのぞいてみてください。
- 好きな館に何度か通い、展示の解説文までじっくり読む
- 歴史・美術・考古・自然科学など、興味のある分野を1〜2個に絞る
- 文化庁の学芸員養成課程開講大学一覧で、志望校に課程があるか確かめる
- 文理選択では、目指す分野で必要になる科目を優先する
文理選択で迷う方もいますよね。歴史や美術なら文系、化石や生き物、科学技術なら理系の学部に進む人が多い、というのが目安になります。
大学1〜2年でやっておくこと
大学に入ったら、早めに学芸員課程(博物館に関する科目を取るためのコース)に登録しておきましょう。登録の時期や条件は大学ごとに違います。
この時期は、専門分野の授業をしっかり取ることも大切です。学芸員の採用では、資格だけでなく、その分野の知識や研究の力が見られるからです。
例えば、ゼミの先生とこんなやり取りをしておくと、3年生以降が楽になります。
「卒業論文、博物館の資料を使って書いてみたいんです」
「それなら、地元の館が持っている資料を一度見に行ってごらん」
卒業論文のテーマは、採用試験の面接や業績の書類で話す材料にもなります。2年生のうちから「この分野のこれを調べたい」を少しずつ温めておきましょう。
- 学芸員課程の登録時期と、必要な科目の取り方
- 専門にしたい分野と、相談できる先生
- 卒業論文で扱えそうな資料やテーマの候補
大学3年で参加しておきたいインターンや体験
3年生になると、博物館での経験を増やしたい時期です。館によっては、学生向けのボランティアや学芸員インターンの募集をしていることがあります。
文化庁の「博物館実習ガイドライン」(令和6年6月版)では、館園実習に「長期実践型」という型が加わりました。延べ80時間以上・計10日以上が目安で、インターンシップ制度などの活用も含みます。
博物館実習の館園実習は、通常は延べ30時間から45時間程度以上・計5日以上が目安です(同ガイドライン)。長期実践型を実習として扱うかは各大学の判断なので、所属する大学の課程で確かめてみてください。
大学4年と就職活動(新卒2026・2027の考え方)
4年生は、博物館実習・卒業論文・採用試験が重なる忙しい時期です。学芸員の採用は、多くの会社のような一斉の新卒採用とは違い、館や自治体ごとに募集が出ます。
例えば埼玉県の令和8年度(2026年度)学芸員採用選考は、申込が6月10日から7月10日、第1次試験が8月3日、採用は令和9年(2027年)4月1日という日程でした。2027年4月に新卒で働きたいなら、2026年の初夏には募集を探し始めておく、という感覚です。
この選考では「学芸員資格を有する人又は令和9年3月31日までに学芸員資格を取得することが見込まれる人」が受験できました。ただし、採用時までに資格が取れない場合は採用されないと明記されています。
博物館実習の単位を落として、資格取得見込みで受けた採用を逃してしまうケースです。実習と卒業に必要な単位は、採用試験の準備と同じくらい大事に管理しておきましょう。
博物館の学芸員になるには採用を突破する
資格の準備ができたら、次は採用です。博物館の学芸員になるには、館の設置者(国・自治体・法人など)ごとの選考を受けることになります。
| 館の種類 | 主な採用の形 | 見ておきたいこと |
|---|---|---|
| 公立の博物館・美術館 | 都道府県や市の学芸員採用選考、会計年度任用職員の募集 | 教養試験・専門試験・論文・面接の有無 |
| 国立の博物館・美術館 | 法人ごとの公募(研究職員・研究員など) | 修士以上の学位や研究業績が求められることが多い |
| 私立の博物館・美術館 | 館や運営法人ごとの募集 | 雇用形態・任期・担当分野 |
公立の館では、自治体が学芸員の採用選考を行います。岐阜県の学芸員(地学・古生物)の採用選考では、第1次が教養試験と論文試験、第2次が適性検査と口述試験でした。
公務員としての採用試験の中身は学芸員は公務員?採用試験の内容と対策で詳しく紹介しています。
国立の館では、研究職としての公募が中心です。東京国立博物館の研究職員の選考案内では「修士の学位を有する者,あるいはこれと同等以上の研究・実務能力を有する者」が応募資格になっていました。
学芸員の募集は、館や自治体のホームページ、研究職向けの求人サイト(JREC-IN Portal)などに分かれて出ます。どこを見ればいいかは学芸員の求人・募集の探し方にまとめています。
採用された後の研修
学芸員として働き始めてからも、学ぶ場はあります。博物館法第7条では、文部科学大臣と都道府県の教育委員会が、館長・学芸員・学芸員補などに研修を行うよう努めると定めています。
学芸員研修は、採用された後に専門性を伸ばしていくための場、と考えておくとよいですね。
狭き門と言われることについて
『学芸員は狭き門って本当?』と不安になる方もいますよね。正直に言うと、募集は館ごとに少しずつ出る形なので、志望する分野や地域によっては待つ時間が長くなることもあります。
日本博物館協会の「令和6年度 日本の博物館総合調査」(速報版)では、回答した館の典型的な姿(中央値)は、常勤職員3人、学芸員資格を持つ常勤職員1人でした。一つの館で学芸員をたくさん採るわけではない、ということが分かります。
倍率や難しさについては学芸員の難易度と倍率で詳しく見ています。
学芸員になりたい人の大学選び
学芸員になりたいなら、大学選びがスタート地点になります。見ておきたいのは「課程があるか」だけではありません。
- 文化庁の学芸員養成課程開講大学一覧に載っているか
- 一覧で「在学生のみ受講可能」などの条件が付いていないか
- 自分が研究したい分野(歴史・美術・考古・自然科学など)の先生や授業があるか
- 博物館実習の実習先を大学が用意しているか、自分で探すのか
- 大学附属の博物館や、学内で資料にふれる機会があるか
- 大学院まで進む道があるか
文化庁の博物館総合サイトでは、博物館に関する科目は「国内の約300校の大学で開講」と案内されています。選択肢は多いので、資格が取れるかどうかより、専門分野を深められるかで比べるのがおすすめです。
学部・学科ごとの選び方は学芸員資格が取れる大学|学部・学科の選び方で紹介しています。

大学院に進むかどうか
国立の館の研究職では、修士以上の学位が応募資格になっている例があります。一方で、自治体の採用選考では大学卒業程度の試験という案内もありました。
目指す館の募集要項を何本か読んでみると、大学院が必要かどうかの感覚がつかめます。詳しくは学芸員に大学院は必要?で紹介しています。
学芸員を目指す道筋が見えてきたら、まずは課程のある大学を探して、資料で専門分野や実習の仕組みを比べてみてください。パンフレットを並べると、同じ学芸員課程でも中身の違いが分かりやすくなります。
大学選び
学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる
学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。
資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)
学芸員になるにはどうすれば?よくある相談
学芸員を目指す人や、そのご家族からよく寄せられる相談に答えます。
子どもが学芸員資格を取るか迷っている。就職は狭き門と聞いて心配
『せっかく取っても、仕事に就けなかったら意味がないのでは』と心配になりますよね。
結論から言うと、資格を取ること自体は大学の授業の範囲でできるので、興味があるなら取っておく価値はあります。ただ、学芸員として採用されるかは別の話なので、専門分野の勉強や他の進路も並行して考えておくのが安心です。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 資格を取るメリット | 学芸員の採用に応募できる、博物館の仕組みを学べる |
| 気をつけたいこと | 授業や実習の負担が増える、資格だけで採用されるわけではない |
| 並行してやること | 専門分野の勉強、一般の就職活動や公務員試験の情報も集める |
大学院に行かないと学芸員にはなれない?
『史学科を出たけれど、大学院には行っていない』という相談もよくあります。
大学院が必須かどうかは、館や募集によって違います。埼玉県の学芸員採用選考は大学卒業程度の試験で、受験資格は学芸員資格を持っているか取得見込みであることでした。
一方、国立の館の研究職では修士以上が求められることが多いです。まずは目指す館の募集要項を見比べてみてください。
通っている大学に博物館に関する科目がない
『今の大学に課程がないから、もう無理かも』と思ってしまいますよね。でも、卒業後に取る道もあります。
学士の学位を持っていれば、通信制大学の科目等履修や、文化庁の資格認定で資格を目指せます。科目等履修とは、学生として入学せずに必要な科目だけを取る仕組みです。
働きながら取る方法は社会人が学芸員資格を取る方法で紹介しています。
よくある質問
学芸員になるには何年かかりますか?
大学で単位を取るルートなら、4年制大学を卒業する時に資格がそろうのが一般的です。採用されるまでの期間は、募集のタイミングや分野によって人それぞれです。
高校生のうちに学芸員の資格は取れますか?
取れません。大学ルートでは学士の学位が条件になるので、大学に進んでから博物館に関する科目を取ることになります。高校生のうちは専門分野を探す時期と考えておきましょう。
学芸員の面接ではどんなことを聞かれますか?
募集によって違いますが、専門分野の研究内容や、その館でどんな仕事をしたいかを問われることが多いです。自治体の選考では、集団討論や個別面接が行われた例もあります。
学芸員になれる確率はどのくらいですか?
学芸員だけの採用倍率をまとめた公的な統計は、この記事では確認できていません。例えば埼玉県の令和8年度学芸員採用選考は、歴史と地質学の分野ごとに各1名の募集でした。気になる募集の要項で、採用予定人数を確かめてみてください。
学芸員の資格がなくても博物館で働けますか?
受付や監視、事務などの職であれば、学芸員資格を条件にしない募集もあります。ただ、学芸員の職として採用される募集では、資格や取得見込みが条件になっていることが多いです。
まとめ
学芸員になるには、資格を取ることと、博物館に採用されることの2つを順番に進める必要があります。
高校生のうちは専門分野を探し、大学では課程と専門の勉強を両立させ、4年生の時期には募集を早めに探しておく。この流れを意識しておくと、学芸員のなり方がぐっと具体的になります。
学芸員という仕事の全体像は学芸員とは?仕事内容・資格・なり方をわかりやすく解説にまとめています。
- 学芸員になるには「資格を取る」と「館に採用される」の2段階がある
- 資格は大学で博物館に関する科目9科目19単位を取るのが基本ルート
- 高校生は分野探し、大学では課程登録と専門の勉強、3年でインターンや体験
- 4年生は実習の単位を落とさず、資格取得見込みで受けられる募集を探す
- 公立は自治体の採用選考、国立は研究職の公募が中心





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