学芸員は公務員?採用試験の内容と対策

博物館の展示ケースと勉強道具が並ぶ机に、学芸員は公務員かを伝える記事タイトル

当サイトは文化庁・文部科学省などの公的機関と、大学・博物館の公式サイトの公開情報をもとに編集部が独自に執筆しています。制度や募集の内容は変わることがあるため、最新の情報は各公式サイトで確認してください。記事内には広告を含む場合があります。

『学芸員って公務員なの?それとも違うの?』と、進路を考える中で気になった方も多いはずです。

結論から言うと、学芸員が公務員かどうかは、働く館を誰が運営しているかで変わります。県や市の博物館で採用されれば地方公務員として働きますが、国立の館を運営する法人や私立の館では、その法人の職員として働きます。

この記事では、館の種類ごとの身分の違いと、学芸員の採用試験の中身、対策の進め方を紹介します。

目次

学芸員は公務員?働く館で身分が変わる

先に結論

学芸員は「公務員の職種」ではなく、博物館で専門の仕事をする職員の呼び名です。公立の館なら自治体の職員、国立の館なら運営する法人の職員、私立の館なら運営する法人の職員として採用されます。

学芸員は、博物館法で博物館に置かれる専門的職員と定められています(博物館法第4条)。博物館法は、館を誰が運営するかによって「公立博物館」と「私立博物館」を分けています。

『じゃあ、自分が目指す館はどれ?』と思いますよね。まずは身分と採用の仕組みの違いを表で見てみましょう。

館の種類運営しているところ学芸員の身分主な採用の仕組み
公立の博物館・美術館都道府県・市町村など地方公務員(正規職員・任期付き・会計年度任用職員など)自治体の学芸員採用選考、会計年度任用職員の募集
国立の博物館・美術館独立行政法人(国立文化財機構・国立美術館・国立科学博物館など)法人の職員(研究職員・研究員など)法人ごとの公募。書類選考・筆記・面接など
文化庁国国家公務員(文化財調査官など)文化庁の採用のお知らせによる選考
私立の博物館・美術館公益財団法人・企業・学校法人など法人の職員館や法人ごとの募集
公立・国立・私立の館ごとに学芸員の身分と採用の仕組みが違うことを示した図解

公立の館でも「指定管理者」の職員のことがある

公立の館の中には、自治体が運営を外部の団体に任せている館もあります。この仕組みを指定管理者制度と呼び、任された団体を指定管理者と言います。

令和6年度の文部科学省「社会教育調査」では、博物館の学芸員5,618人のうち、指定管理者の職員が865人でした。公立の館で働いていても、指定管理者の職員なら公務員ではない、ということもあるんです。

会計年度任用職員も地方公務員の一つ

自治体の学芸員の募集では「会計年度任用職員」という言葉もよく見かけます。これは、一会計年度(4月から翌年3月)を超えない範囲で置かれる非常勤の職で、一般職の地方公務員にあたります。

総務省によると、この制度は令和2年4月1日から始まりました。勤務時間によってパートタイムとフルタイムの2つの型があります。

『公務員の学芸員=ずっと同じ館で働く正規職員』とは限らない、ということですね。雇用形態の違いは学芸員の雇用形態で詳しく紹介しています。

学芸員資格を持つ公務員が、別の部署で働くこともある

自治体に学芸員として採用されても、配属は博物館だけとは限りません。埼玉県の令和8年度学芸員採用選考の案内では、博物館・文書館などのほか、教育委員会事務局で文化財保護の仕事をする場合もあると書かれていました。

学芸員資格を持った公務員として、展示の仕事も文化財の保護の仕事も経験していく働き方、と考えるとイメージしやすいですね。

私立の館で働く場合

私立の博物館・美術館では、運営する公益財団法人や企業、学校法人などの職員として働きます。採用の方法や試験の中身は館ごとに決まるので、公務員試験のような共通の形はありません。

私立の館を目指すなら、館のホームページの採用情報や、研究職向けの公募サイトをこまめに見ておきましょう。

公務員として学芸員になる採用試験の内容

公立の館の学芸員になるには、自治体の学芸員採用試験を受けるのが一般的です。ここでは、実際の受験案内から試験の中身を見てみます。

項目埼玉県(令和8年度 学芸員採用選考)岐阜県(学芸員・自然分野の採用選考)
分野歴史(近世史)・歴史(近現代史)・地質学地学・古生物
受験資格学芸員資格を持つ人、または採用日の前日までに取得見込みの人など大学卒業(見込み可)で学芸員資格を持つ人(取得見込み可)など
第1次試験専門試験Ⅰ(記述式)・専門論文試験・一般論文試験教養試験(択一式50題)・論文試験
第2次試験専門試験Ⅱ(記述式)・人物試験(集団討論・個別面接)適性検査・口述試験
採用予定日令和9年4月1日令和9年4月1日

同じ学芸員の公務員試験でも、自治体によって中身がかなり違うのが分かりますよね。埼玉県は専門試験と論文が中心で、岐阜県は教養試験が入っています。

年齢などの条件も確かめておく

受験資格には生まれた年の条件が付くことがあります。埼玉県は昭和40年4月2日以降生まれ、岐阜県は平成3年4月2日以降生まれが条件でした。国籍の扱いも自治体や募集で違うので、受験案内で確かめてみてください。

教養試験

教養試験は、一般の公務員試験でも出る、文章理解や数的処理、社会のしくみなどを問う試験です。岐阜県の選考では、択一式50題を2時間30分で解く形でした。

教養試験がある自治体を受けるなら、一般の公務員試験の問題集で練習しておくと役に立ちます。

専門試験と論文

専門試験は、担当する分野の知識を問う試験です。埼玉県のように、歴史や地質学といった分野ごとに記述式で出題されることがあります。

論文は、専門分野について書く論文と、博物館や行政の課題について書く一般的な論文に分かれることがあります。ここが学芸員の試験ならではのところですね。

面接と集団討論

最後に人物試験として、面接や集団討論が行われます。埼玉県の選考では、集団討論と個別面接の両方がありました。

面接の前に言葉にしておきたいこと
  • 自分の専門分野と、大学や大学院で調べてきたこと
  • その自治体の館が持つ資料や展示に、どう関わりたいか
  • 展示だけでなく、教育普及や文化財の保護の仕事への考え
  • 土日を含む勤務や異動についての受け止め方

面接の練習では、例えばこんなやり取りを想定しておくと話しやすくなります。

「この館で、どんな展示をやってみたいですか?」
「地元の古文書を、子どもにも読める形で紹介する展示をしてみたいです」

答えの中に、その館の資料や地域の話を一つ入れられると、準備してきたことが伝わります。

埼玉県の案内には、博物館・文書館で働く場合は土日を含む変則勤務とありました。『展示の仕事だけしたい』より、館の仕事全体にどう関わるかを話せると説得力が出ます。

学芸員の採用情報はどこで見る?

自治体の学芸員の採用情報は、都道府県や市の職員採用ページ、教育委員会のページに載ることが多いです。埼玉県の令和8年度選考は、インターネットで申し込む形でした。

過去の受験案内が残っている自治体もあるので、受けたい自治体の案内を前の年の分まで読んでおくと、試験の形がつかめます。探し方は学芸員の求人・募集の探し方にまとめています。

国立の館や文化庁の学芸員の選考

国立の博物館・美術館では、自治体の採用試験とは別に、法人ごとの公募で選考が行われます。研究職としての採用が中心なので、選考の中身も研究寄りです。

募集の例主な応募資格選考の流れ
東京国立博物館 研究職員修士の学位、またはこれと同等以上の研究・実務能力など書類選考、筆記(専門分野の小論文・英文和訳)、面接
九州国立博物館 アソシエイトフェロー修士以上の学位または同等の研究業績、学芸員の資格など書類選考、筆記(語学・専門)、面接
国立科学博物館 研究員修士以上の学位または同等の研究業績など(学芸員資格は歓迎)書類審査、面接や口頭での研究内容の発表を求めることがある
文化庁 文化財調査官(任期付き)大学院修士課程修了以上またはこれと同等の知識・経験、日本国籍書類選考(課題論文・主な論文や著書)、面接

文化庁の文化財調査官は、給与が「一般職の職員の給与に関する法律」に基づくと案内されていました。国の職員として働く例です。

国立の館で働く道は国立の博物館・美術館の学芸員になるにはで詳しく紹介しています。

よくある思い込み

『国立の館の学芸員も、国家公務員試験を受ければなれる』と考えてしまうケースです。国立の館を運営する法人は、それぞれの公募で研究職を選考しています。目指す館の採用情報ページを直接見るのが確実です。

研究業績がものを言う

国立の館の選考では、書類の段階で研究業績が見られます。東京国立博物館の研究職員の第1次選考は、研究業績・論文・著書などによる書類選考でした。

大学院で書いた論文や学会での発表は、こうした選考でそのまま評価の材料になります。研究を続けてきたことを、一覧にして説明できるようにしておきましょう。

学芸員の国家試験はある?資格認定の試験との違い

学芸員の試験と聞いて、学芸員の国家試験のようなものを思い浮かべる方もいますよね。実は、学芸員の試験には性質の違う2つがあるんです。

くらべる点学芸員の資格を取るための試験学芸員として採用されるための試験
具体的には文化庁の学芸員資格認定(試験認定)自治体の学芸員採用試験、国立の館の公募の選考
中身博物館に関する8科目の筆記試験専門試験・論文・面接など
合格すると学芸員の資格を得る道が開けるその館や自治体で働く

文化庁の資格認定は、大学で単位を取らなかった人などが学芸員の資格を得るための仕組みです。試験認定と審査認定があり、令和8年度は試験認定、令和9年度は審査認定というように年度ごとに交互に行われます。

令和8年度の試験認定は、12月17日・18日に東京で行われる予定です。令和6年度の試験認定では、出願者84人のうち筆記試験合格者は50人でした(文化庁公表)。

試験認定の受験資格や流れは学芸員資格認定(試験認定・審査認定)とは?で紹介しています。

学芸員の資格は「国家資格」?

学芸員の資格は、一般に国家資格と呼ばれることもあります。ただ、文化庁などの公的なページでは「博物館法に定められた資格」「博物館等で任用される」という説明になっています。

学芸員の採用試験に向けた対策

学芸員の採用試験の対策は、大学の早い時期から少しずつ進めておくと楽になります。ポイントは「資格」「専門」「試験」の3つを並行させることです。

学芸員の公務員試験に向けた準備の流れ
  1. 目指す自治体の過去の受験案内を探し、試験の科目と日程を確かめる
  2. 学芸員課程の科目と博物館実習を、採用日までに取りきれる計画を立てる
  3. 専門分野の知識を深め、卒業論文や研究の内容を説明できるようにする
  4. 教養試験がある自治体なら、一般の公務員試験の問題集で練習する
  5. 論文の練習として、博物館の役割や地域との関わりについて書いてみる
  6. 面接に向けて、その自治体の館の展示や収蔵資料を実際に見ておく
学芸員の公務員試験に向けて資格・専門・試験の準備を順番に進める流れを示した図解

『資格の勉強と採用試験の勉強、両方なんて無理かも』と思いますよね。でも、専門分野の勉強は、資格の授業にも採用試験の専門試験にもつながっています。

論文の練習は「問い」を立てるところから

学芸員の採用試験の論文では、博物館の役割や地域とのつながりがテーマになることがあります。博物館法でも、博物館は地域の関係機関と連携して地域の活力の向上に寄与するよう努めると定められています(第3条)。

練習の時は、例えばこんな問いを立てて、実際に書いてみてください。

  • 地域の博物館が、学校とどう連携できるか
  • 収蔵資料をデジタルで公開する時に気をつけたいこと
  • 若い世代に博物館に来てもらうためにできること

書いたものは、大学の先生や学芸員課程の先生に読んでもらうと、自分では気づかない弱いところが見えてきます。

よくある失敗

資格取得見込みで受験したのに、博物館実習などの単位が足りずに採用日までに資格が取れないケースです。埼玉県の案内にも、採用時までに資格が取れない場合は採用されないと書かれていました。

まだ資格の準備がこれからなら、採用試験より前に、学芸員課程のある大学を決めることが第一歩です。課程のある大学を探して、資料で専門分野や実習の仕組みを比べてみてください。

大学選び

学芸員課程のある大学を探して、資料で比べてみる

学芸員資格は、文部科学省令で定める博物館に関する科目を大学で修得して得るのが基本です。通信制で学べる大学もあります。まずは文化庁が公開している学芸員養成課程の開講大学一覧で候補を探し、気になる大学の資料を取り寄せて、実習の扱いや費用、学べる期間を見比べてみましょう。

資格取得学芸員養成課程の開講大学一覧を見る

(文化庁の公式サイトに移動します。最新の課程・募集内容は各大学の公式サイトで確認してください)

学芸員と公務員試験、よくある相談

学芸員と公務員試験について、よく寄せられる相談に答えます。

学芸員を目指すなら、一般の公務員試験も受けておいた方がいい?

『学芸員の募集だけを待っていて大丈夫かな』と不安になりますよね。

学芸員の採用選考は、募集のある年や分野が限られます。

そのため、一般の公務員試験や民間の就職活動も並行して考えておくと安心です。教養試験がある自治体なら、勉強の内容も重なります。

並行の仕方重なるところ気をつけたいこと
学芸員の採用選考と一般の公務員試験教養試験や面接の準備試験日が重なることがある
学芸員の採用選考と民間の就職活動自己分析や面接の練習学芸員の選考は夏から秋に続くことがある
学芸員の採用選考と大学院進学専門分野の研究研究計画と卒業論文の準備が重なる

どれを選ぶかに正解はありません。『学芸員の道は続けたい』という気持ちを大事にしながら、自分に合う組み合わせを考えてみてください。

学芸員の試験勉強は、どんな本を参考にすればいい?

資格を取るための文化庁の試験認定なら、まずは文化庁のサイトに載っている過去問題から始めるのがおすすめです。令和2年度から6年度までの試験問題が公開されています。

試験科目は、生涯学習概論・博物館概論・博物館経営論など8科目です。過去問題で出題の形をつかんでから、大学の学芸員課程で使われる教科書で足りない科目を補っていくと進めやすくなります。

公務員試験と学芸員の試験、どちらが難しい?

試験の難しさを数字でくらべた公的な資料は、この記事では確認できていません。ただ、学芸員の採用試験は専門試験や専門論文があるのが大きな違いです。

一般の公務員試験の勉強だけでは足りず、専門分野の深い知識が求められます。

分野ごとに募集人数が少ないことも、難しく感じる理由の一つです。難易度や倍率の話は学芸員の難易度と倍率で詳しく見ています。

県立の学芸員試験は、何をどう勉強すればいい?

まず、受けたい県の受験案内を読んで、試験科目と形式を確かめるところからです。専門試験が記述式なら、分野の基本用語や研究の流れを、自分の言葉で書けるように練習しておきましょう。

例えばこんなふうに、自分に問いかけてみてください。

「この時代の資料を、展示でどう見せたい?」
「地元の館の収蔵資料で、まだ調べられていないものは何だろう?」

こうした問いに答える練習が、論文や面接の準備にもなります。

公務員試験の行政・心理・福祉・技術のどの区分になる?

学芸員は、こうした一般の区分とは別に「学芸員」という区分で採用選考が行われる例があります。埼玉県や岐阜県も、学芸員としての採用選考を別に行っていました。

自治体によって区分の名前は違うので、気になる自治体の職員採用ページで「学芸員」の区分があるか探してみてください。

よくある質問

学芸員の公務員試験は毎年ありますか?

自治体や分野によって違います。募集が出ない年もあるので、目指す自治体の採用情報を毎年確かめておくのがおすすめです。

学芸員資格がなくても学芸員の採用試験は受けられますか?

自治体の学芸員採用選考では、学芸員資格を持っているか、採用日までに取得見込みであることが受験資格になっている例が多く見られます。資格の準備は早めに始めておきましょう。

学芸員の面接ではどんなことを聞かれますか?

自治体や館によって違いますが、専門分野の研究内容や、その館でどう働きたいかを問われることが多いです。集団討論が行われる自治体もあります。

学芸員の採用試験は大学卒業程度ですか?

埼玉県の令和8年度学芸員採用選考は、大学卒業程度の試験と案内されていました。国立の館の研究職では修士以上の学位を求める例があり、募集によって求められる水準は変わります。

公務員の学芸員の給料はどう決まりますか?

自治体の給与条例や給料表で決まります。詳しくは学芸員の年収・給料の記事で紹介しています。

まとめ

学芸員が公務員かどうかは、働く館を誰が運営しているかで決まります。公立の館なら地方公務員、国立の館なら法人の職員、私立の館なら運営する法人の職員です。

公立の館を目指すなら、自治体の学芸員採用試験の専門試験・論文・面接に向けて、資格と専門の勉強を並行させましょう。

給与の決まり方は学芸員の年収・給料|公務員の給与の決まり方で紹介しています。学芸員という仕事の全体像は学芸員とは?仕事内容・資格・なり方をわかりやすく解説で紹介しています。

この記事の要点
  • 学芸員が公務員かは、働く館の運営者(自治体・法人)で変わる
  • 公立の館でも、指定管理者の職員なら公務員ではないことがある
  • 自治体の学芸員採用試験は、専門試験・論文・面接が中心で、教養試験がある所も
  • 国立の館は法人ごとの公募で、修士以上の学位や研究業績が求められることが多い
  • 文化庁の資格認定の試験は「資格を取る試験」で、採用試験とは別もの
学芸員ガイド

学芸員ガイド 編集部

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